猫の病気
2022年03月03日

猫の肝不全。余命に関わる症状や、その原因、治療法について解説。

猫の肝不全は肝臓に障害を受けることで引き起こされます。肝不全の猫では嘔吐や下痢、体重減少などの症状や肝性脳症による強い症状がみられることがあります。肝不全の原因や動物病院でおこなうことができる治療法、余命の短い猫に対して飼い主ができるターミナルケアについて解説します。

この記事の監修者

江本 宏平 氏

獣医師、犬猫の在宅緩和ケア専門、2012年日本大学卒 通院できない犬猫に獣医療を届けるため、往診専門動物病院わんにゃん保健室を設立。 短い時間の中で行う「業務的な診察」ではなく、十分な時間の中で家庭環境を踏まえた診療プランを提供できる「飼い主に寄り添う診察」を心がけています。
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猫の肝臓に異常がみられる肝不全とは?

猫の肝不全とは肝臓に異常がみられるさまざまな疾患が原因となり、肝機能に大きな障害がみられる状態です。

肝臓は体内におけるもっとも大きな臓器のひとつであり、腸管から吸収した栄養の貯蔵、全身の細胞が利用しやすいエネルギー源への変換、老廃物や毒物の分解、身体の中で機能する蛋白質などの合成をおこなっており、生命活動を維持するために非常に重要です。肝不全によって肝機能が低下することはときに命に関わる重篤な症状を引き起こします。

肝不全の猫でみられる症状

1.元気、食欲の低下
猫に元気がない、普段よりもよく寝ている、遊びたがらないなどの元気の低下や、ごはんを残すようになったなどの食欲の低下は他の疾患でもよくみられる症状ですが、猫の体調不良を表すひとつの指標になります。肝不全では吐き気により食欲が低下することもあります。

2.嘔吐、下痢
嘔吐、下痢は消化器症状とよばれ胃腸の障害などにより引き起こされます。肝不全の原因疾患である三臓器炎では胃の直下にある十二指腸に炎症がみられます。十二指腸の炎症や、三臓器炎に含まれる炎症性腸疾患(IBD)では嘔吐、下痢がみられます。

3.体重の減少
肝機能低下による食事中の栄養の吸収不良や、代謝障害は猫の体重減少を引き起こします。また、猫の体重減少が肝リピドーシスとよばれる病態を通じ、強い吐き気や嘔吐によるさらなる状態の悪化の原因になることもあります。

肝不全の進行でみられる症状

1.肝機能の著しい低下による症状
肝臓にはアルブミンや、血液凝固因子とよばれる蛋白質を合成する役割があります。これらの生理活性物質は血液に含まれ、それぞれ機能的な役割を持ちます。

肝不全が進行することで蛋白質の合成能が低下し、身体に大きな症状を引き起こす場合があります。アルブミンには血液内の水分を血管に留める役割があり、肝不全による低アルブミン血症は腹水を引き起こします。腹水はお腹にある内臓を収納する空間に血管から漏れ出した体液が貯留する病態であり、お腹にある筋肉である横隔膜を圧迫することによる呼吸困難や、お腹が異常に膨れる腹囲膨満などの症状がみられます。

また、肝不全により肝硬変や肝線維症が引き起こされ、腸管から肝臓へと向かう太い血管である門脈の血圧が異常に上昇することでも腹水は引き起こされます。

血液凝固因子とは血小板などの血液中の細胞が出血を止めるために不可欠な物質であり、多くが肝臓で合成されます。血液凝固因子の欠乏では皮膚の紫斑(皮下出血)や、爪切りの失敗やケガによる出血が止まらないなどの症状がみられます。

2.黄疸
黄疸は口の中や、眼の粘膜が黄色く変色する症状です。肝機能が一定以上に低下したときにみられ、肝細胞に含まれる色素が体外に排出されない、もしくは血液中に漏れ出すことで引き起こされます。

3.高アンモニア血症および肝性脳症
肝臓にはアンモニアなどの毒素を解毒する役割がありますが、肝機能低下により血液中のアンモニア濃度が異常に高くなった状態を高アンモニア血症とよびます。

高アンモニア血症では胃潰瘍による嘔吐や吐血、肝性脳症などの大きな症状や病態を引き起こします。肝性脳症はアンモニアによる脳や脊髄などの中枢神経の障害であり、歩行困難や意識レベルの異常、痙攣などの神経症状の原因となります。

高アンモニア血症の猫では口からアンモニア臭がするなどの症状もみられます。

監修者コメント
江本 宏平
株式会社 B-sky 代表取締役 / 獣医師

肝不全で特徴的なアンモニア臭や黄疸について見極めるには、「普通の状態」を知っておくことが重要です。呼気から明らかな異臭がした場合には、おそらく異変に気づけると思います。しかし、それではすでにもう遅いかもしれません。
ポイントは呼気の普通を知っておくこと。口が臭いと感じた場合には、そのほとんどが口腔内の問題だと思います。しかし、普段からその臭いを気にしておくことで、微妙な変化に気づけるかもしれません。
次に、可視粘膜の色です。白目が白いということ、耳の内側の色、そしてお腹の皮膚の色などが挙げられます。普段の色を知っておくと、食欲減退や元気消失に伴った色の変化に気づけるかもしれません。

肝不全の猫の余命

肝不全は症状が急速に進行する急性肝不全と、長い期間にわたってみられる慢性肝不全に大別されます。一般的に急性肝不全の猫では治療が上手くいかない場合の余命は短く、慢性肝不全の猫では長期の闘病が必要です。

また、猫でもっとも多い肝疾患として三臓器炎に含まれる胆管炎、胆管肝炎があります。これらの疾患は進行することで肝不全を続発させる可能性があります。胆管炎には細菌感染により引き起こされる化膿性胆管炎と、ウイルス感染やその他の原因による非化膿性胆管炎が存在します。これらふたつの胆管炎は原因だけではなく予後の違いを持ちます。化膿性胆管炎と比較して非化膿性胆管炎は難治性であり、再発を繰りかえしながら徐々に進行していくため長期の闘病が必要になるといわれています。

肝不全を引き起こす疾患のうちリンパ腫においては余命を示す指標である中央生存期間(MST)が報告されています。猫でもっとも一般的なリンパ腫であり肝臓への転移、浸潤が考えられる消化器型リンパ腫のMSTは48日であり、同様に肝臓への発生が考えられる多中心型リンパ腫では135日だと述べられています。

肝不全の猫に飼い主ができること

肝不全の末期症状では高アンモニア血症による肝性脳症や、強い吐き気による食欲廃絶、削痩、腹水の貯留による呼吸困難などがみられ、猫の生活の質(QOL)を大きく低下させます。

猫におこなうターミナルケアとして、定期的な動物病院の受診と治療の継続はもっとも大きな効果をもつもののひとつです。末期肝不全を根本的に治療することは難しいですが、QOLの低下をできるだけ食い止めるための治療をおこなうことはできます。

輸液による血液成分の是正、高アンモニア血症に対する治療、吐き気をとめる投薬、栄養の補助、腹水の抜去などいくつもの治療により、猫はより快適な最後を迎えることができるでしょう。

愛猫が天寿を全うするときまで、動物病院における治療や、獣医師に指示された在宅での処置をおこなうことには大きな意味があります。

監修者コメント
江本 宏平
株式会社 B-sky 代表取締役 / 獣医師

肝不全になると高頻度の通院を求められます。医学側面とは相反し、猫ちゃんの多くが通院できません。通院ができるのであれば、通院にて緩和処置を実施し、通院が難しい場合には往診で緩和処置を実施してもらいましょう。

肝不全の原因

肝不全は肝疾患による肝機能低下が原因となって引き起こされます。肝臓および、肝臓に付随する臓器である胆嚢や胆管の疾患の発生率を比較した研究では、非化膿性胆管炎を示すリンパ球性胆管炎がもっとも罹患率が高い疾患であり、肝リピドーシスが含まれる可逆性肝細胞障害、肝炎などがその次に多い疾患であると報告されています。

その他、化膿性胆管炎を示す好中球性胆管炎や、リンパ腫が含まれる造血器腫瘍などがよくみられる疾患として述べられています。

これらの疾患はウイルスや細菌による感染症や、体外からの異物を排除する機構である免疫の暴走である自己免疫性疾患、代謝の異常による疾患、原因のよくわかっていない特発性疾患などに区分されます。

肝不全を引き起こす疾患

胆管炎および三臓器炎

化膿性および非化膿性胆管炎、胆管肝炎は猫でもっともよくみられる肝疾患です。これらの疾患は炎症性腸疾患(IBD)、膵炎などと密接な関係があり、2~3の疾患が併発することにより三臓器炎とよばれます。

胃の直下にある腸管である十二指腸には肝臓からの消化液が分泌される胆管、膵臓からの消化酵素が分泌される膵管が開口しています。肝臓、胆管の炎症である胆管肝炎、膵臓の炎症である膵炎、腸管の炎症であるIBDは、解剖学的に距離が近い十二指腸においてお互いに炎症や細菌、ウイルスの感染を波及させていると考えることができます。

IBDは特発性の疾患ですが自己免疫性疾患の一種だと考えられている腸炎です。三臓器炎に含まれる疾患のうちIBDは原因疾患として示唆されています。化膿性および非化膿性胆管肝炎はIBDに原発するなんらかの理由で引き起こされている可能性があります。

肝リピドーシス

肝リピドーシスは猫の脂肪肝です。肥満の猫や家出やストレスによる絶食、食欲の低下が原因となり発症します。肝リピドーシスはそれ自体が肝不全を引き起こすだけではなく、胆管炎、膵炎、IBDなどの三臓器炎と同時にみられることが多い疾患であり、なんらかの関係性が示唆されています。

肝リピドーシスの発症には猫という動物種の持つ生物学的な特徴が深く関与しています。猫は肉食性の非常に強い動物であり、多くのアミノ酸や脂肪酸を食事中から摂取しなければなりません。絶食や食欲の低下によりこれらの栄養素の吸収が滞ることで、肝臓では脂肪をエネルギー源へと変化されるための正常な働きをおこなうことができなくなり、肥満猫などで多い脂肪組織から動員されてきた脂肪を消費しきれなくなります。その結果、脂肪肝が引き起こされ、肝リピドーシスの発症を引き起こします。

リンパ腫

リンパ腫は猫でもっとも多い腫瘍性疾患であり、死因としてもよくみられるものです。免疫細胞の腫瘍であるリンパ腫には発生部位によりいくつかの区分があり、腸などの消化器に発生する消化管型リンパ腫が一般的です。その他、鼻腔内リンパ腫や縦隔型リンパ腫、多中心性リンパ腫などの種類が知られています。

消化器に発生する消化器型リンパ腫や、さまざまな臓器に発生する多中心型リンパ腫は原発もしくは転移、浸潤により肝不全を引き起こす可能性があります。

また、野外猫で蔓延する猫白血病ウイルス(FeLV)感染症は縦隔型リンパ腫を代表するリ腫瘍性疾患を引き起こし、猫の腫瘍関連死の約1/3に関連しているとも報告されています。

縦隔とは首の付け根から胸部あたりまで続く膜組織であり、心臓や胸腺などの臓器を吊り下げる役割を持ちます。縦隔型リンパ腫は胸腺に原発する腫瘍ですが、肝転移がみられることがあり、その場合肝不全の原因となります。

動物病院でおこなう肝不全の検査と治療

肝不全の検査

動物病院でおこなうことができる肝不全の検査には触診や視診による検査、血液成分の検査、画像検査などが含まれます。

触診や視診による検査では腹痛の有無や、触知できる肝腫大の有無、黄疸などの症状をみつけるためにおこないます。

血液成分の検査では肝パネルとよばれる肝臓の異常の指標となる数値などを評価し、肝機能やそのほかの異常を発見します。

また、X線や超音波(エコー)検査では肝臓の大きさや、内部構造を視覚的に検査することができます。

肝不全の治療

肝不全の治療では、原因となる疾患に対する治療をおこないます。三臓器炎に対しては抗生物質の投与による細菌感染への治療、ステロイドなど炎症を抑える治療薬の投与をおこない、肝リピドーシスに対しては吐き気を止め、食欲を回復させる治療、リンパ腫に対しては抗がん剤を使用した多剤併用療法をおこなっていきます。

そのほか、必要に応じて血液成分を調整するための輸液や、下痢などの症状に対する対症療法を併用していきます。

普段からできる肝不全の予防について

肝不全を引き起こす疾患には肥満症が深く関係しているものが含まれます。肥満症の猫では脂肪の蓄積や栄養代謝の異常がおきやすく肝機能に影響を及ぼす可能性があります。

肥満症と関係が深い肝不全の原因疾患を予防するためにはダイエットをおこなうことが重要です。しかし、無理なダイエットは食事量の低下や、食欲の低下を引き起こし、肝リピドーシスを発症させてしまうことがあります。

猫のダイエットをおこなう上で「1」適切な体重減少を目指す、「2」食欲の低下を引き起こさないことは重要です。

「1」適切な体重減少のためにはダイエットをはじめたときの猫の体重から一週間に0.5~2%減量していく必要があります。②食欲の低下を引き起こさないためには、ダイエット用の総合栄養食に餌を変える際に、もとの餌と混ぜ徐々に慣らしていくことが大事です。

かかりつけの獣医師に相談し、ダイエット計画をたてていくことも安全なダイエットをおこなう上でとても意味があります。

早期発見の為に飼い主ができること

猫の肝不全を早期発見するためには毎日の健康観察をおこなうといいでしょう。健康観察では体重の変化や、食欲の変化、嘔吐や下痢などの有無を確認してください。ただ、猫の肝不全の初期徴候はわかりにくい場合があります。定期的な動物病院の受診や、健康診断の受診は、血液検査や画像診断などにより隠れている疾患をあぶりだすために役に立ちます。

まとめ
  • 猫の肝不全は肝疾患による臓器の機能低下が原因となる。
  • 肝不全を引き起こす疾患には、胆管炎、胆管肝炎、三臓器炎、肝リピドーシス、リンパ腫が含まれる。
  • 肝不全には比較的余命が短くなる急性肝不全と、長期の闘病が必要な慢性肝不全がある。
  • 胆管炎や胆管肝炎、三臓器炎は猫でよくみられる肝疾患である。
  • 肝不全の治療では原因となる疾患に応じた処置をおこなう。
監修者コメント
江本 宏平
株式会社 B-sky 代表取締役 / 獣医師

肝臓は沈黙の臓器と言われるくらい、そこの不調からくる症状に気付きづらいです。
明らかな所見に気付く方法として、「普段」を知っておくことが何より重要ですが、やはり気づける段階まで進行させないことが本来であれば重要です。
教科書的なことを言えば、「早期発見」「早期治療」が大切ですが、とは言っても多くの猫ちゃんが通院を得意としていません。できれば定期検診を受けさせてあげたほうがいいですが、それが難しいようであれば、往診で検査を実施してくれる動物病院を今のうちから探すことを強く推奨します。ぐったりしてしまったが、動物病院には連れて行けないのでどうしよう、と困ってしまう前に、まずは今置かれている環境から見つめ直すことも重要かもしれません。
「もっと早く気づいていれば」とならないよう、早め早めの行動と、普段からのコミュニケーションを大切にしましょう。

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参考文献

Retrospective study of the relative frequency of feline hepatobiliary disease in New Zealand based on 10 years of hepatic biopsy samples
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この記事のライター

若林 薫

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麻布大学を卒業し獣医師免許を取得、大手ペットショップで子犬・子猫の管理獣医師として勤める。その後、製薬企業での研究開発関連業務を経て、ライターとして活動する。幅広い専門知識を生かした記事作成を得意とする。
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