ペットのお葬式に香典は必要?不要?
近年、友人のペットの葬儀に呼ばれることも珍しくなくなりました。そこで、どうすればよいのか迷うのが、香典ではないでしょうか。実は、ペットの葬儀に香典は必要ありません。
香典をふくめ、ペットの葬儀では服装などのマナーもいまだに決まった形式はありません。ペットの火葬やお葬式をとりおこなう習慣は最近できあがったものだからです。
香典とはいったいなに?
もともと人間の葬儀でも香典は弔意を表すひとつの方法で、お金ではなくてもよいものです。供花、供物、弔電などでも構いません。
「香典」の漢字からわかるように、古くはお香を供えていたことからも、お金にこだわる必要がないことがわかります。
急な不幸で遺族の負担を思いやる助け合いの精神から、お金を渡すことが一般的になったのでしょう。
ペットのお葬式に香典を持参するなら相場はいくら?
香典が不要だとわかったものの、どうしても渡したいと思ったら、香典のマナーを知っておきましょう。ペット葬儀の香典は、人間と比べると相場は低めです。
人間が亡くなった場合、故人との関係が友人関係なら、香典の相場は5,000~10,000円です。しかし、ペットのお葬式に持参される香典の相場は3,000円です。
金額が高いと、飼い主やほかの参列者に気を遣わせてしまうかもしれないので、多くても5,000円までにしておくとよいでしょう。
香典袋の書き方
ペット葬儀用の香典袋はないので、香典袋は人間の葬儀に使うもので構いません。
表書きや袋、のしは宗教や宗派、地方によって異なります。そのため、仏式でのみ使用される蓮の柄や箔押しの香典袋は避けるほうが無難でしょう。
表書きに関しても、事前に飼い主さんの宗派などがわかれば、それにのっとって記載しますが、一般的には「御霊前」で構いません。

ここで押さえておきたいことは、「御霊前」と「御仏前」の違いです。よく、2つとも記載されたものが販売しておりますが、この違いがわかることで、マナーとしても役に立ちます。
「御霊前」に関しては、上記に書いてある通り、一般的に使用する香典の名称です。これは、霊の状態(49日以前)のことを指し、亡くなったご遺体や、火葬後のお骨でも49日以前ですと、御霊前として香典をお渡しすることとしております。
「御仏前」とは、霊ではなく仏(ほとけ)です。仏式のお話では、49日が過ぎると、魂の霊が仏に変わると言われており、49日以降に香典をお持ちする際は、御仏前として渡すことがよろしいでしょう。
ペット葬儀に持って行くと喜ばれるものとは
ペットの葬儀に持って行くと喜ばれるものは、香典よりもお花やおやつです。それぞれ詳しく解説していくのでご確認ください。
お花
供花はとても喜ばれます。人間の場合は菊など落ち着きのある色合いの仏花をお供えしますが、ペットの場合はどのようなお花でも問題ありません。
ただし、トゲがあるお花や花粉が多く落ちるお花はあまり好まれないので、注意してください。
もうひとつの注意点は、棺に入れるお花です。
遺骨への色移りをふせぐため、濃い色のお花は避けましょう。また棺の大きさにも考慮し、棺に入りきる量と大きさを選んでください。
もしお花選びで悩んだら、亡くなったペットをイメージしてみましょう。
太陽のように元気なペットであったなら黄色いお花を。クールな印象のペットであればブルーもキレイでよさそうですね。
もしくはいつも身に着けていた首輪やリボンがあれば、同じ色に合わせてみるのはいかがでしょうか。飼い主からすると、いつも自分のペットを見てくれていた、覚えていてくれたのだな、と嬉しく思うはずです。
どうしても決められないときは、お花屋さんで「ペット葬儀用のお花」と伝えると選んでくれるので、ぜひ参考にしてみてください。
おやつ
友人のペットの好みがわかっているならば、生前に好きだったおやつやごはんなどをお供えしても喜ばれます。
また、おやつを棺に入れて火葬するなら、紙コップや紙のお皿などを事前に用意して、そのなかへ入れておきましょう。
プラスチックの袋や缶、ゴムなどは、燃やすと火葬炉や環境を汚染したり、遺骨に悪影響を及ぼしたりするので、火葬前に確認をしてください。
ペット葬儀のマナーとは
ペットの葬儀がはじめてな方は特に、マナーを事前に知っておくと、あなたのためにもなるはずです。
ペットの葬儀は歴史が浅いため、決まりきったマナーややり方、お悔やみの言葉などがまだありません。
そのため、ある程度参列者の常識にのっとっている部分があり、その人の人となりがさらけ出されてしまうことがあります。
ペットの葬儀に呼ばれたなら、特にお悔やみの言葉と服装はしっかりと記憶しておいてください。
お悔やみの言葉
まず心得たいのがお悔やみの言葉です。
ペットの葬儀の場合、相手のことを気遣って発した言葉でも、相手を傷つけてしまうかもしれない言葉があります。
・新しく飼えばよい
・他の子もいるから
上記の2つの言葉には注意してください。
●「新しく飼えばよい」
たしかに新しいペットとの出会いで、気持ちが前向きになる方もいます。
しかし、どんなにかわいいペットでも亡くなったペットの代わりにはなりません。葬儀に友人を呼ぶほどかわいがっていたペットならば、家族同然の存在だったはず。
深い悲しみのなかにいる飼い主さんに追い打ちをかけてしまう恐れがあるため、注意しましょう。
相手に「早く立ち直って欲しい」という気持ちはわかりますが、愛するペットを亡くした直後に心が切り替わり、他の子を飼える飼い主ばかりではありません。
そのうえ、飼い主の年齢や環境、体力が必ずしも再度ペットを飼えるとは限らないため、この言葉は避けておきましょう。
●「他の子もいるから」
これも同じように相手を傷つけやすい言葉です。
たとえば人間が亡くなった場合、お子さんを亡くした方に「他に子供がいてよかったね」とは言えないはずです。ペットを自分の子供のようにかわいがっている相手に対して使ってよい言葉とはいえません。
ペットの葬儀に呼ばれた場合は、相手の気持ちをよく考えて、相手に寄り添うような言葉をかけてあげてください。
もちろん、人間の葬儀に使われる「お悔み申し上げます」「ご冥福をお祈りいたします」は問題なく使えます。飼い主とペットが長年寄り添いながら生きてきたことや、ペットの死に少なからず後悔を抱いているかもしれないことを考えて、悔いのないお別れができるような一言をかけてあげましょう。
服装
ペット葬儀には決まった服装がありませんので、どのような服を着るか悩むことでしょう。
もちろん、派手すぎる格好は問題ですが、ペットの葬儀には私服で参加される方が多いです。ただし、場合によっては喪服をおすすめすることがあります。
それは、人間の葬儀でも利用する葬儀場や火葬場でペットの葬儀をとりおこなうときや、僧侶を呼ぶときです。これは、他の葬儀に出ている会葬者や僧侶に不快な思いをさせないための配慮です。
ペット葬儀専用の場所やセレモニーカーで葬儀をとりおこなうならば、私服・喪服どちらでも構いません。自分のペットの葬儀を自宅でとりおこなう場合も同じです。
友人のペットの葬儀に参列するなら、黒や紺を基調とした落ち着きのある服装が無難でしょう。
どのような葬儀になるのかわからないなら、事前に確認しておくことをおすすめします。また、数珠は必須ではありませんが、用意があるなら持参したほうがよいでしょう。会場によっては数珠の貸し出しを行っているところもあるので、こちらも確認してみてください。
ペットの葬儀に参列する必要性
ペットの葬儀は人間の葬儀と同じく、参列義務がないため、友人のペットの葬儀に呼ばれると参列を迷うかもしれません。
しかし、ペットの葬儀は家族やごく親しい人だけでとりおこなう傾向にあり、葬儀をとりおこなう側も縁が深い方を呼んでいます。
相手が親しくしていた仲間や近所の方ならば、参列をしてもよいのではないでしょうか。
仕事や外出などで参列できないときや、どうしても気が引けるなら、落ち着いてからあらためて伺うか、供花や弔電を送ることを考えてみてください。
ペットの葬儀に忌引きは適応されるのか
ペットの火葬や葬儀では忌引きは適応されません。
しかし、日本企業のなかにもペットのために忌引きが適応される企業があります。それは、アイペット損害保険株式会社やユニ・チャーム株式会社、日本ヒルズ・コルゲート株式会社、株式会社エウレカなどです。
このようなペット忌引きを導入している企業以外にお勤めの場合は、残念ながら有給休暇や欠勤扱いとなります。そのうえ、ペットの火葬やお葬式のために有給申請をしても、職場によっては理解が得られないかもしれません。
ペットの火葬やお葬式のために休暇を取るなら、よく考えてからの行動をおすすめします。
ペット葬儀が増えてきた理由
ペットの火葬やお葬式が近年になって浸透してきた理由は、2012年に動物の亡骸が廃棄物として明確に規定されたからです。これは、「廃棄物処理法」の関連法である「循環型社会形成推進基本法」に記載されています。
それまではペットが亡くなると、おもに焼却炉に持って行き処分してもらうか、土に埋めるかでした。
しかし法の改正により、自分で埋葬するのが難しくなりました。飼い主に、所有権がない土地や河川、森林、海に亡骸を埋めることは不法投棄に該当するからです。
不法投棄が見つかれば5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。そのうえ、埋めた場所が公園など公共の場所になると、さらに軽犯罪法その他の法律の違反により処罰されるでしょう。
この場合、1日〜30日以内の拘留、または1,000円〜1万円以内の科料となります。
たとえペットが河川や公園、海などを気に入っていても、埋葬はできなくなったのです。
また、埋葬問題として、飼い主の家または飼い主が所有する土地に亡骸を埋めた場合でも、腐敗臭や虫が繁殖するなどのトラブルが起きるかもしれません。ご近所トラブルにならないよう、もしご自宅のお庭などに埋めるときは、いちど火葬して骨にしてからのほうが、安心です。
そもそも最近ではマンションなど庭がない家庭が増えたこともあり、ペットの亡骸を土に埋める習慣はほとんどなくなっています。
そして、ペットを家族として迎え入れる方が増えたこともあり、ペットが亡くなったときには、人間と同じように火葬やお葬式をとり行うことが一般的になってきました。

ペットの葬儀は、10年前と比べて、人間の葬儀に近しいものにどんどん変化しております。
それは、飼い主様のペットに対する気持ちの変化があるのだと思います。今までは、家畜のように思われていた犬や猫も、コンパニオンアニマル(伴侶動物)としての地位がございます。
ペットと暮らす私達には十分に理解できるでしょう。動物達は私たちを幸せにしてくださるかけがえのない存在です。
そんな子達にも、人と同じように亡くなった後、しっかりと供養していただきたい。その思いこそが、考え方を変化しているのだと感じます。
まだまだ、法律や企業体制などが追いついていないことではございますが、大切なペットを送り出すということは、自分の親族が亡くなるのと同じ悲しみ、辛さがあるということを皆様にご理解いただきたいです。