2022.07.13
2023.09.11
猫の熱中症はどんな症状?応急処置や予防対策などを詳しく解説
猫の熱中症は、重篤になると命にかかわる非常に危険な状態です。日中お留守番をさせる家庭の場合は、室内での予防対策が必須です。熱中症になってしまった場合の対応、かかりやすい種類など猫の熱中症について詳しく解説します。
猫の熱中症とは
熱中症の原因は、高温多湿の環境に長時間さらされることです。
それにより体温が上昇するため、からだが熱を下げようと、心拍数や心拍出量が増え、呼吸が激しくなります。
それでもうまく体温が下がらないと脱水症状を起こし、命にかかわる非常に危険な状態です。
猫は、人間と違い発汗による体温調整がうまくできません。
そのうえ、猫は鼻呼吸なので、犬のように「ハッハッハッ」と激しい口呼吸(パンティング)で体温を下げることは稀です。※1
そのため、猫が熱中症にかかってもわかりにくく、口呼吸をするころにはすでに熱中症が進行していると考えられます。※2
猫が熱中症になりやすい気温
猫にとっての適温は20~28℃、湿度は50~60%程度です。※3
気温だけではなく湿度にも気を配り、5月から秋半ばまでは熱中症予防をしてください。
猫の熱中症の症状
猫の平熱は37.5~39.2℃です。(肛門で測定する深部体温)※4
熱中症にかかると、平熱以上に体温が上昇します。
それに加えて脱水が起こると、血液やリンパなどの循環が阻害されることで臓器などに障害が生じます。
すると、体温調整に必要な脳や腎臓に行く血液が減ってしまい、さらに体温調整が難しくなります。
その状態が続くと、ナトリウム不足によるけいれんや筋肉の壊死・融解が重なり、多臓器不全になり死に繋がります。死を免れたとしても、重篤な熱中症では後遺症が残る可能性は否めません。軽症の熱中症でも後遺症が残る場合があるほどです。
まずは、猫の熱中症の症状をしっかりと把握しておいてください。
そして、熱中症の症状が出たら後述する応急処置をするとともに、獣医師に連絡を取りましょう。
初期~中期の症状
猫の熱中症の症状は以下のようなものがありますが、全てが出るわけではなく、他の症状が出ることもあります。
これらは全て個体差があることを認識しておいてください。
- 口を開けてハァハァと激しい口呼吸(パンティング)をする
- からだが熱い
- よだれを垂らす
- 目や口の粘膜や耳が赤くなる(充血)
- ウロウロとして落ち着きがない
- 食欲不振
- 吐き気・嘔吐・下痢
- 心拍数の増加
- 一時的にふらついて倒れてしまう・うまく立てない
危険な重度症状
- 虚脱や失神
- 筋肉のふるえ
- 意識が混濁し、呼びかけにあまり反応しない
- 完全に意識がない
- 全身性のけいれん発作を起す
- 吐血・下血(血便)・血尿などの出血症状
- チアノーゼ
- ショック症状
※5
熱中症に気づかなかった場合や、すぐに回復して獣医師に相談しなかったときなど、3~5日後に遅れて重篤な症状が現れることもあります。
そのようなときは、以下のような症状が現れます。
熱中症の症状が出たら、すぐに回復したとしても、必ず獣医師の診察を受けてください。
- 乏尿~無尿
- 黄疸
- 不整脈
- 呼吸困難
- 皮膚の紫斑や点状出血、全身性の出血傾向
- 意識障害
- 発作
※4
猫の熱中症の予防対策
猫は暑い時期や自分の体温が高いと感じたときは動こうとしません。
加えて、猫は群れで生きる動物ではないため、具合の悪さを表に出さない生き物です。
激しい口呼吸をほとんどせず、汗もかかない猫は体温調整が得意ではありません、猫を熱中症にかからせないように、予防対策をしっかりと行ってください。
※2.4.8
室内で留守番させるとき
まずは十分な水をいつでも飲めるように、数個所に水飲み容器を設置してください。
容器が変わると警戒する猫もいるため、夏場だけではなく、普段から複数個所に設置することをおすすめします。※1
そして、カーテンを閉めてエアコンをつけてください。
エアコンの設定温度の目安は24~26℃ですが、猫の状態(寝たきり・肥満・病気・年齢)により調整しましょう。事前に獣医師に相談しておくと良いでしょう。※4
湿度は高くても60%までとなるよう、除湿機能もうまく使ってください。
除湿機能は猫が水を飲むようになるため、よりおすすめです。※3
ただし、エアコンが効きすぎた部屋が苦手な猫もいます。
ドアを少し開けておく、猫用ドアを設置するなどして必ず逃げ道を作り、移動できるようにしてあげてください。
加えて扇風機を設置し、直射日光が当たらない場所に大理石やアルミマットなどのひんやりグッズや、水を入れて凍らせたペットボトルなどを置いておきましょう。
ひなたぼっこが好きな猫の場合
ひなたぼっこは猫の習性のひとつです。
猫はひなたぼっこをすることで体温調整をするとともに、皮膚や毛を乾かし、菌やノミダニの繁殖を抑えていると考えられています。
そのため、猫にとってひなたぼっこはとても大切なことなのですが、行動範囲が狭くなっている老猫や、日向から移動できないような環境では、ひなたぼっこによる熱中症の危険が高まります。
上手にひなたぼっこをさせられるよう、近くに水を置き、涼しい場所に移動できる環境を作ってあげてください。
ただし、日向の水は傷みやすいため、まめに容器を洗い、水を新鮮なものに替えてあげましょう。
加えて、レースのカーテンなどで直射日光を避け、5月ごろからエアコンを使って室内温度の管理をしてください。
老猫の場合は窓辺から安全に、気楽に降りられる環境を作ることと、ときどき抱っこで移動させてあげることも大切です。特に、からだが熱くなっていたらすぐに移動させましょう。老猫は感覚器官が鈍くなっているうえ、面倒で動かないこともあるからです。※1.2
くれぐれも、日向にゲージなどで猫を閉じ込めておくことのないようにしてください。※8.9
車で猫と出掛けるとき
通常、車は猫にとって慣れているものではありません。
不慣れな場所では緊張して、体温が急上昇します。※5
猫を車に乗せる際はエアコンを使い、決して猫を車内に放置しないでください。
窓を開けていても、車の中はすぐに温度と湿度が上昇します。
数分の間だったとしても、熱中症は数分でも進行します。
車で猫と移動するときは、必ずエアコンをつけましょう。
キャリーケースで猫と出かけるとき
狭いキャリーケースの中は熱中症になりやすい環境です。
キャリーケースには無数の換気孔などがついていますが、猫が入ると風の対流が妨げられます。そのうえ、放射熱を浴び、水もありません。
緊張して猫の体温も上がっているでしょう。
こうした状況は熱中症になりやすいため、できるだけ近所の獣医師をかかりつけ医とし、夏場の暑い時間帯での移動を避けてください。※4.5
激しい運動
猫は暑いときはあまり動こうとしないものの、遊び盛りの子猫は別です。
おもちゃで遊んであげると、例え自分の体温が高くても夢中で遊んでしまう傾向にあります。子猫を飼っているときは、運動をして熱中症にならないように温度と湿度に注意をしてください。※4
万が一熱中症になったときの応急処置
万が一、猫が熱中症になってしまったら、慌てずに以下の応急処置をしつつ獣医師に電話をしてください。
電話をすることで適切な処置を教えてもらえ、獣医師のもとに着いてからの処置もスムーズです。
- 運動時はすぐに動きを止める
- エアコンが効いた場所に移る(外ならば日陰で風通しが良い場所で、アスファルトを避ける)
- 水を飲ませる(自分で飲まないときは無理に飲ませない・人間と違い塩分は与えない)
- 常温の水で濡らしたタオルを猫のからだに当て、風を送る
※7
冷やし過ぎに注意
熱中症にかかった猫に対し、冷水や保冷剤、氷を使うのは危険です。
熱中症は徐々に体温を下げる処置が大切だからです。
体温を下げすぎると、今度はからだを温めようとして、血管の収縮や体の震えが起きます。ひどい場合は、低体温から戻らないこともあるでしょう。※7
そのうえ、急激な冷却は、末梢血管が収縮し、温度の高い血液が各臓器に循環してしまいます。
こうなると逆に熱が発散しにくくなり、熱中症が進行し、臓器障害へと発展してしまうでしょう。※10
どんな猫が熱中症になりやすい傾向にあるの?
以下のような猫は熱中症に注意をしてください。
猫種
ペルシャ、エキゾチックショートヘア、ヒマラヤン、ブリティッシュショートヘアなどの短頭種は、スムーズな呼吸がしにくい傾向にあります。そのため、呼吸による体温調整が苦手で、熱中症になりやすいと言えます。※10
メインクーンやノルウェージャンフォレスト、ラグドール、ペルシャ、ヒマラヤンなどの長毛種は、毛が長いため熱がこもりやすく、熱中症になりやすいでしょう。※1.6
ブラッシングをまめに行い、熱中症予防をしてください。
短頭種かつ長毛種のペルシャやヒマラヤンなどは特に注意が必要です。
他に、黒色は太陽光を吸い込み、体温が上がりやすいため、黒い毛を持つ猫も熱中症に注意をしてください。※4
病気や肥満などの健康状態
呼吸を妨げる恐れのある呼吸器系の病気や、スムーズな体温の放出に不可欠な循環器系の病気は熱中症リスクが増大します。
この2つに影響を及ぼす恐れのある肥満も、熱中症リスクが高いでしょう。
特に皮下脂肪は体内の熱をためやすく、脂肪による気道狭窄リスクも考えられるため、特に注意が必要です。
これらの既往歴がある猫は、まずは病気と肥満を解決しましょう。
健康な猫の場合は、年1回の健康診断を必ず行い、シニア期になったら2回に増やすなどをして予防することをおすすめします。このとき、夏場を避けて健康診断に行きましょう。
そして、病気や夏バテなどで体力が落ちている猫も同様に注意をしてください。※1.4
年齢
子猫は体温調整機能がまだ不十分で、老猫は体温調整機能が衰えています。
子猫や老猫は熱中症に気を付けなければいけません。
特に子猫は遊びの最中や後などに注意をし、老猫はひなたぼっこや高い所にいるときに注意をしましょう。
エアコンの温度はやや高めに設定し、都度様子を見て調整してください。※1
まとめ
- 熱中症は、高温多湿の環境に長時間さらされることで起こる
- 猫にとっての適温は20〜28℃、湿度は50〜60%程度で、温度と湿度両方に気を配る
- 熱中症の症状が出たら応急処置をするとともに、獣医師に連絡を取り、必ず受診させる
- エアコンの設定温度の目安は24~26℃だが、猫の状態(寝たきり・肥満・病気・年齢)により前後する
- 老猫はひなたぼっこのまま面倒で動かないことがあるため、ときどき抱っこで移動させる
- 猫を車内に放置することや、長時間キャリーケースにいれることはやめる
- 熱中症は徐々に体温を下げる処置が大切で、体温の下げ過ぎや急激な体温低下はとても危険
※1:【獣医師監修】猫の熱中症とは?気になる対策とその症状を重症度別に解説
https://www.i-sedai.com/pet/column/cat/C0110.html
※2:【獣医師監修】猫は熱中症になりにくいって本当?
https://www.earth-pet.co.jp/advice/advice210901
※3:【獣医師監修】猫にとって快適な室温は何度?暑い夏…愛猫にとって適切な住環境を作ろう
https://dictionary.petsallright.net/archives/5323
※4:猫の熱中症対策・完全ガイド~原因・症状から応急処置法まで
https://www.konekono-heya.com/byouki/accident/heat-stroke.html
※5:猫の熱中症(熱射病、日射病)
http://www.petwell.jp/disease/cat/necchuu.html
※6:猫も熱中症にご用心!症状と対策、応急処置の方法を解説!
https://www.petfamilyins.co.jp/pns/article/pfs202106a/
※7:熱中症
https://www.fpc-pet.co.jp/cat/disease/409
※8:猫は意味があって日向ぼっこする。気持ちいいだけじゃない深い理由
https://nekogohan-web.jp/hinatabokko339/
※9:猫が日向ぼっこ好きなのはなぜ?効果や熱中症などのリスクも紹介
https://petokoto.com/articles/3296
※10:熱中症、こんな人は特に注意!熱中症、こんな人は特に注意!
https://www.netsuzero.jp/learning/le09
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この記事の執筆者
竹田 恵氏
ペットシッター士
ライター
竹田 恵氏
ペットシッター士
ライター
2017年よりライターとして活動中。子供の頃から動物好きで、猫、ハムスター、うさぎの飼育経験あり。現在はシーズー犬と一緒に暮らしている。犬は他の動物と比べて人間と密な生活になるため、ペット関係の資格を取得した。
運営元情報
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