2022.02.09
2023.09.11
高齢猫の後ろ足に力が入らない原因となる病気や間違った対処法とは
高齢猫は、後ろ足に力が入らなくなり、ふらついたりよろけたりすることがあります。この原因となる病気は、脳腫瘍や心筋症、貧血などがあります。この記事では後ろ足に力が入らなくなった高齢猫の介護・介助などについて解説します。
この記事の監修者
増田 国充氏
ますだ動物クリニック院長 / 獣医師
増田 国充氏
ますだ動物クリニック院長 / 獣医師
獣医師、防災士、2001年北里大学卒
2007年ますだ動物クリニック開院。診療に東洋医療科を加え、鍼灸や漢方による専門外来を実施。運動器疾患に対して鍼灸による治療を積極的に取り入れ、県内外から症例に対応する。また、鍼灸・漢方等で国内外で講演を実施。動物看護系専門学校非常勤講師兼任。
高齢猫の後ろ足に力が入らない!?まずは獣医による診察を受けよう
猫の後ろ足に力が入らない原因は、病気やケガが考えられます。
高齢猫の場合は、筋肉が落ちたことによる関節炎の可能性も考えられますが、病気の可能性も無視できません。すぐに動物病院を受診してください。
なぜなら、高齢猫はちょっとした異常が原因で命取りになることがあるからです。
また、後ろ足に力が入らない、ふらつく、などの動作異常がみられるときは、動画を撮影しておくと診察の一助となることも。
様子がおかしいと感じたら、動画を撮影しておくと良いでしょう。
また、後ろ足に力が入らなくなったきっかけ(急にそうなったのか?いつから?など)があればそれも、診察の際にお伝えください。
猫の後ろ足に力が入らない、ふらつく時に考えられる原因
後ろ足に力が入らない原因として考えられるものを挙げていきましょう。
また、ふらつく、よろけるという症状しかない、あるいはそれしかわからないときのために、その原因も記載しておきます。
後ろ足に力が入らないかどうかを確認しにくいときは、こちらも参考にしてください。
怪我
例えば、骨折や足の裏の怪我、膝蓋骨脱臼、ヘルニアなどの神経症、関節炎などが後ろ足に力が入らない原因としてあげられます。
特に高齢の猫は、筋肉が落ちることで関節炎を発症させることがありますし、筋肉が落ちたことで高いところから落下し、骨折や脱臼、ヘルニアを発症させるケースもあるでしょう。
足の裏の怪我以外は素人では判断できませんので、必ず動物病院を受診してください。(※1)
脳腫瘍
高齢猫の後ろ足に力が入らない、ふらつく、よろけるという症状は、脳腫瘍が原因となっていることがあります。
脳腫瘍は、脳に腫瘍が発生した場合と、他の部分にできた腫瘍が転移した場合の2種類あり、以下のような症状が現れます。
- うまく歩けない
- 立てない
- 足がもつれる
- 元気食欲の低下
- けいれん
- ふらつく・よろける
- 性格が変わる
- 失明
- 首から頭にかけて斜めにねじれる(斜頸)
- 眼球が一定方向に規則的に動く(眼振)
- ぐるぐると回る(旋回)
猫の様子がおかしいと思ったら、すぐに動物病院に連れて行ってください。(※1)
心筋症
心筋症は、高齢猫の循環器疾患の中でも多い病気です。
心筋症は、心臓の筋肉そのものの異常で心機能が低下する病気で初期症状は以下のようにわかりにくいため、飼い主でも見逃すことがあります。
- 元気がなくなった
- 食欲不振
- 疲れやすく、遊ばなくなった
心筋症が進行すると、以下のような症状が出てきます。
- 主に両方の後ろ足を引きずって歩く、力が入らない
- 呼吸が荒い、あるいは多い
- 口を開けて苦しそうに呼吸をする
- 咳をする
- ぐったりとうずくまる
- 体重減少
- 運動を嫌がる
- 失神を繰り返す
- 後ろ足が異常に冷たい
- 肉球の色が白っぽくなる
- 歯肉や舌の色が白っぽい、あるいは紫色(チアノーゼ)になる
このような症状が出てきたら、動物病院を受診してください。
また、心筋症がなぜ、後ろ足の状態に関係するかというと、心筋症によって血栓が作られるからです。
主に心臓の左心房で作られた血栓が血管や脳に詰まることが多く、そうなると心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすことがあります。
猫の場合は、後ろ足の根元の血管に血栓が詰まることが多く、後ろ足の血液の巡りが遮断されてしまいます。その結果後ろ足の麻痺や壊死が起きてしまうのです。
そのため、運動を嫌がったり疲れやすくなったりするうえ、悪くなった足の肉球が青白く、冷たくなるのですぐに気づくはずです。
もちろん、血栓は後ろ足だけに行くとは限りませんし、呼吸困難などの他の症状だけが出ることもあります。
心筋症は突然死を招くこともあり、早期に発見できても数年元気でいられるとは限りません。しかし、無症状でも健康診断で偶然見つかり、治療に繋げられることもあります。定期的な健康診断を怠らないようにしましょう。(※2)
貧血
ふらつく、よろけるというときは貧血も考えられます。
貧血とは、血液中の赤血球が少なくなることです。赤血球は酸素を運ぶ重要な役割を担っているため、貧血が進むと体中に酸素が届かなくなり、以下のようなさまざまな症状が現れます。
- 疲れやすい
- ふらつく、よろける
- 動こうとしない
- 元気がない
- 食欲不振
- 歯茎や舌などが白っぽい
他にもふらつきの原因としてビタミン類の欠乏や熱中症、脳の障害や三半規管の異常なども挙げられます。
どの原因にしろ、老猫の場合は命に関わります。必ず動物病院を受診してください。(※3)
間違った対処法は、取り返しがつかないことになることも
老猫の場合、後ろ足に力が入らない原因として、筋肉が落ちたことによる関節炎が挙げられると前述しました。
ただし、筋肉が落ちたせいだと勝手に判断し、運動をさせることは危険です。
また、高齢猫の負担だからと通院させないのも間違いです。
猫にとって通院は、ストレスや疲れは感じるかもしれませんが、体調がよくない状態を放置するのはとても危険です。
必ず動物病院に連れて行ってあげてください。
猫はわれわれ人間や犬と比べて機敏な動物といわれます。
瞬発力に優れ高い跳躍力もあることから、骨や関節は丈夫であるという印象があります。しかしながら猫は高齢になると関節炎がかなり高い確率で発生します。12歳以上の猫では、実に90%以上が関節炎だというデータがあります。初期の関節炎は日常生活でほとんど気にならない程度の行動の変化なのですが、やがて動きが緩慢になったり、抱っこした際に痛みを訴えたりすることもあります。ここでの紹介のように後ろ足に力が入りづらい症状を見せる場合もあります。
異変に気付いた際に診察を受けるのはもちろんのこと、シニア期になったら定期的なドック検査をされることが推奨されます。
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後ろ足に力が入らなくなりやすい猫種
膝蓋骨脱臼は、アビシニアンやデボンレックスなどに多く、心筋症はメインクーンやラグドール、アメリカン・ショートヘアに多い病気です。
ただし、脱臼や骨折はどんな猫にも起こりうる、怪我です。
心筋症も、「アニコム家庭どうぶつ白書2018」によると循環器疾患の内訳で一番多くなっています。「アニコム家庭どうぶつ白書2019」でも、猫の請求理由の第5位が心筋症です。(※4)
こうしたことを考えると、猫を飼っている方は定期的に健康診断を行い、予防することが飼い猫の長生きに大事ということがわかります。
大事なのは健康なときからの予防
高齢になるとどんな動物でも体調が悪くなりやすくなります、それを重症化させないためには早期発見が一番大切です。
それには健康なときから健康診断をすることが効果的です。
老猫になってからするのではなく、若く健康なうちからすることでその子の生活や癖について獣医も知ることができます。
長年ペットを飼っている筆者自身、小さい頃から同じ先生に診察してもらったことでたくさんのメリットを感じています。
特に、飼い猫を小さい頃から知ってもらうことで円滑なコミュニケーションができ質問や相談がしやすくなります。
そして、飼い猫がかかりやすい病気を知ることでこちらも準備ができるのです。
健康なときから健康診断をするのは人間では当たり前のことです。
家族であるペットにも、定期的な健康診断をお勧めします。
まとめ
- 猫の後ろ足に力が入らない原因は、病気やケガが考えられる
- 高齢猫で後ろ足に力が入らなくなったら、すぐに動物病院を受診する
- 動物病院を受診する際は、猫のおかしくなった様子をできるだけ動画撮影しておくと良い
- 老猫の後ろ足に力が入らない原因を筋肉が落ちたせいだと判断し、運動をさせることは危険
- 高齢猫には担だからと通院させないのは間違い
- 健康なときから健康診断をし、早期発見・重症化を防ぐ努力を
愛猫が突然後ろ足に力が入らなくなる様子が見られたら、大いに心配し動揺することと思います。神経系に関連したものや、筋肉・骨格の問題であることもあります。また、猫の場合は循環器の病気で突然後ろ足に力が入らなくなってしまうことがあります。後ろ足の不調が循環器の病気に由来することもあるのです。実際に急激に後ろ足が動かなくなった猫の診察をすると、心筋症と診断されることは少なくありません。いずれの場合であっても、その原因に合わせた適切な治療を行い改善につなげていかなくてはなりません。
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※1:猫の後ろ足に力が入らない原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説
https://pshoken.co.jp/note_cat/cat_symptom/case027.html
※2:突然後ろ足が動かない…猫の心筋症で起こることも
https://www.anicom-sompo.co.jp/nekonoshiori/870.html
※3:貧血|ペット保険のFPC
https://www.fpc-pet.co.jp/cat/disease/339
※4
アニコム 家庭どうぶつ白書2018
アニコム 家庭どうぶつ白書2019
https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_201812.pdf
https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_201912.pdf
※1当社運営ペット葬儀サービスに対するお客様アンケート:詳細はこちら ※2 弊社運営ペット葬儀サービス全体のお問い合わせ件数
この記事の執筆者
竹田 恵氏
ペットシッター士
ライター
竹田 恵氏
ペットシッター士
ライター
2017年よりライターとして活動中。子供の頃から動物好きで、猫、ハムスター、うさぎの飼育経験あり。現在はシーズー犬と一緒に暮らしている。犬は他の動物と比べて人間と密な生活になるため、ペット関係の資格を取得した。
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