2021.08.31
2023.12.13
猫は死後生き返るのか?死後硬直と解硬から考えるその可能性。

猫が死んでしまったとき遺体を前にして、待っていたら起き上がりいつものように振る舞うかもしれない、と考えてしまうかもしれません。猫の死後変化である死後硬直と解硬は、猫が生き返るという噂と関係があります。きちんと愛猫を弔ってあげるために、学びを進めていきましょう。
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この記事の監修者

増田 国充氏
ますだ動物クリニック院長 / 獣医師
増田 国充氏
ますだ動物クリニック院長 / 獣医師
獣医師、防災士、2001年北里大学卒
2007年ますだ動物クリニック開院。診療に東洋医療科を加え、鍼灸や漢方による専門外来を実施。運動器疾患に対して鍼灸による治療を積極的に取り入れ、県内外から症例に対応する。また、鍼灸・漢方等で国内外で講演を実施。動物看護系専門学校非常勤講師兼任。
猫の死と生き返り
猫の寿命は15歳前後といわれ(※1)、個体によってはさらに長生きする場合があります。長い間共に暮らしていた猫に対して、愛情やそれ以上の大切な思いを抱く飼い主も少なくないでしょう。
慢性腎臓病や老衰などの死因で猫が死んでしまったとき、深い後悔と悲しみを感じるかと思います。力なく横たわる遺体を前に「猫が生き返ればいいのに」とふと考えてしまうことがあります。
死後硬直後の猫が生き返ったといううわさを聞いたことがあります。本当に死亡した猫が生き返ることはありえるのでしょうか?
猫の生き返りの可能性について、獣医学や生理学の側面を含んだ学術的でわかりやすい解説をしていきます。
猫は死後硬直後に生き返るのか?
結論から言うと死後硬直をおこした猫は生き返りません。猫の生き返りを否定するためには、死んでしまった猫の身体の中でおきている変化が、どのようにして死後硬直や解硬を引き起こしているのかを理解する必要があります。
死後硬直とは
死後硬直は死後数時間のうちにはじまる全身の筋肉の硬直です。頭部から前肢、後肢と後方に向けて進行していく特徴があります(※2)。
生物の細胞はアデノシン3リン酸(ATP)とよばれる物質をエネルギー源として活動しています。ATPは利用効率のよいエネルギーであり、細胞は絶え間ないATPの補充と使い切りを繰り返しています。
死後硬直は、生物死によってATPの補充がなされなくなることから始まります。細胞は一瞬でATPを使い切り、ATPの枯渇が引き起こされます。筋肉の細胞ではATPが枯渇することで筋小胞体というカルシウムイオンの貯蔵庫が機能できなくなり、細胞中のカルシウムイオンの濃度が異常に高くなります。
筋肉の細胞におけるカルシウムイオンは筋肉を収縮させる作用があるため、ATPの枯渇による細胞内カルシウムイオン濃度の上昇は、筋肉の持続的な収縮を引き起こします。この状態を死後硬直とよびます(※3)。
死後硬直後に始まる解硬
死後硬直は筋肉の持続的な収縮ですが、解硬はその後に訪れる筋肉の不可逆的な弛緩です。死後硬直が24時間ほど持続したのち、解硬は訪れます(※2)。
筋肉の活動にはアクチン、ミオシンとよばれているミルフィーユのように折り重なっている2種類の筋原線維が大きな役割を果たしています。アクチンとミオシンはお互いをレールのように一方に滑りあい、筋肉を収縮、弛緩させます。
解硬はこれらの筋原線維が断片化してしまい、機能を失ってしまうことで引き起こされます。さきほど説明したATPの枯渇による細胞内カルシウム濃度の上昇は、カルシウムイオンもしくはカルシウムイオンによって作動する酵素の作用により筋原線維の破壊と断片化を引き起こすと示唆されています(※2,3,4)。
解硬と生き返りの関係
死後硬直とは生物死によって引き起こされる筋肉の硬直であり、解硬とは二度と戻らない筋肉の破壊が引き起こすことが分かりました。以上が、死後硬直や解硬などの死後変化を経た猫は死んでおり生き返ることはない、という説明になります。
筋肉の弛緩である解硬は、遺体の表情の変化や、場合によっては安置した位置からのほんの少しの移動を引き起こす可能性があります。
死後硬直した猫が生き返ったという俗説は、おそらく解硬による現象だろうと考えることができるでしょう。
けっして忘れてはならない点として、猫の生き返りの誤認は、人生を長く共に歩んできた猫の死に際して、飼い主の大きな愛情がみせた幻だということです。人の認知としての猫の生き返りの体験はけっして間違ったものではありません。
いつ埋葬するべき?
猫が死んでしまった場合、すぐに安置や供養をする必要がありますが、一方で悲しみや後悔を受け取る時間が必要だと感じるでしょう。
良好な環境にある遺体は、一般的に冬場で2~3日、夏場で1~2日の間安置できるといわれているようです。
それ以上長期の安置は、死後硬直、解硬からつながるさらなる死後変化である腐敗を引き起こし、臭いや公衆衛生上の問題の原因となります。死後1~3日を猫の遺体と向き合う時間とするのがよいでしょう。
死後すぐにするべきこと
猫の遺体とできるだけ長く向き合う時間をつくるためには、死後すぐに冷房のよく効いた冷暗所に安置することが大事です。タオルなどで包んだ保冷剤で遺体をよく冷やすことも必要です。
また、市町村や民間業者がおこなっている火葬などの弔いは、連絡してすぐにおこなえないことがあります。できる限り早い時間に連絡をとるようにしましょう。

愛猫の死に直面し、お別れの時間を十分に設けたいところではありますが、生命活動を終えた個体はそこから徐々に腐敗が始まります。
環境中の温度が高いほど亡くなった猫の体の中に存在する微生物の活動が活発になり、すなわち腐敗を加速させてしまいます。熱中症や何らか高熱が関連して死に至った場合、夏場などは遺体が傷むペースがどうしても上がってしまいます。
命を終えた体をすぐに冷やすというのは心情的に気が進まないと思う方がいらっしゃるかもしれませんが、これも最後の猫への愛情としてぜひお気遣いください。
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ペットちゃんのもしもの時、慌てて悔いの残るお別れとならないよう、事前準備が必要です。ペトリィでは生前のご相談も可能です。
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まとめ
- 死後硬直は生物死によるATPの枯渇が引き起こす筋肉の収縮である。
- 解硬は死後硬直した筋肉が破壊、断片化する変化であり、不可逆的である。
- 死後硬直と解硬は死後変化であり、その後に猫が生き返ることはない。
- 解硬による遺体の表情や位置の変化が生き返りの俗説の原因だと考えられる。
- 死後数日で遺体の状態が悪化するため、遺体と向き合うことができる時間も数日である。

愛猫のとの別れは誰であっても辛く悲しいものです。中には死という現実を受け入れることが難しい場合も存在します。生前の楽しい思い出と感謝を胸に、できるだけ良い状態でお見送りができるようにしてあげたいものです。
死後硬直は個体が生命活動を終えてから数時間程度経過するとみられます。また、この緊張が緩化されることでそれまでの表情とは異なった様相を示すことがあります。それが「もしかしたら息を吹き返すのでは??」という期待につながっていることと思います。
生物学的にはこの状態から再び命がともることは残念ながらありません。しかしながら、このような期待をする飼い主さんの気持ちこそが尊いものだと確信しています。
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※1 一般社団法人 ペットフード協会 全国犬猫飼養状態調査
https://petfood.or.jp/data/chart2020/2.pdf(参照2021-8-31)
※2 獣医師広報版 死後硬直、死後強直の持続時間
http://www.vets.ne.jp/faq/pc/stiffen001.html(参照2021-8-31)
※3 Coupling of Rigor Mortis and Intestinal Necrosis during C. elegans Organismal Death
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5863043/(参照2021-8-31)
※4死後硬直の解除とCaイオン 他1文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/19/4/19_4_261/_pdf/-char/ja(参照2021-8-31)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1968/12/4/12_194/_pdf(参照2021-8-31)
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この記事の執筆者

若林 薫氏
獣医師
ライター
若林 薫氏
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麻布大学を卒業し獣医師免許を取得、大手ペットショップで子犬・子猫の管理獣医師として勤める。その後、製薬企業での研究開発関連業務を経て、ライターとして活動する。幅広い専門知識を生かした記事作成を得意とする。
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