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ペットの介護

2022.01.27

2023.09.11

犬の床ずれについて~予防法やグッズの選び方、寝返り介助など~

犬の床ずれは、ケア用品などのグッズを使い、清潔を保つことで予防できます。この記事は、犬の床ずれ予防方法やグッズについて、清潔に保つ方法、寝返り、大型犬の床ずれなどについて解説します。犬の介護についてお悩みの方はぜひ、ご一読ください。

この記事の監修者
監修者

増田 国充氏

ますだ動物クリニック院長 / 獣医師

増田 国充氏

ますだ動物クリニック院長 / 獣医師

獣医師、防災士、2001年北里大学卒
2007年ますだ動物クリニック開院。診療に東洋医療科を加え、鍼灸や漢方による専門外来を実施。運動器疾患に対して鍼灸による治療を積極的に取り入れ、県内外から症例に対応する。また、鍼灸・漢方等で国内外で講演を実施。動物看護系専門学校非常勤講師兼任。

犬の床ずれとは?

犬の床ずれは、人間の床ずれと同じです。
原因や症状、なりやすい箇所をきちんと理解しておくことで予防することが出来ます。

まずは犬の床ずれの原因から確認していきましょう。

犬の床ずれの原因

皮膚表面の組織が壊死した状態のことを床ずれ(褥瘡[じょくそう])、と言います。この原因は、以下の5つです。(※1)

圧迫

同じ姿勢でいると同じ部分に体重がかかり圧迫されます。それらが原因となり血行不良になり、床ずれになります。

牽引

牽引とは「ずれる力」のことです。例えば、食事の際に上半身を起こした状態にし、長時間そのままにした場合、皮膚が引き延ばされ、圧迫されたのと同じような作用になってしまうのです。

摩擦

ベッドの上などで這うように動く犬ならば、皮膚が引きずられ、摩擦により皮膚がすり減り、床ずれの原因になります。

湿気

湿気は摩擦を増強するだけではなく、適度の湿気により皮膚の外側にある保護層が弱くなり、損傷する恐れもあります。そのため、排泄物や汗、ウェットティッシュなどの湿気をそのままにしておくと、それだけで床ずれができやすくなってしまうのです。

栄養不足

栄養不足も床ずれの原因になります。
身体が痩せ、衝撃を和らげる体脂肪が不足してしまいます。また、タンパク質、ビタミンC、または亜鉛が不足している場合は、皮膚の治りが悪くなります。

犬の床ずれになりやすい箇所

犬の床ずれになりやすい箇所は、骨が出ていて脂肪が少ない以下の部分です。

  • 膝関節部分
  • 前足の肘部分
  • 腰骨
  • 足首

犬の床ずれの症状

床ずれの初期は、皮膚が赤くなる程度で済むこともあれば、皮膚が薄くなることで痛みやかゆみが出ることもあります。

これを放置し症状が進んでしまうと皮膚に穴があき、骨や関節が露出することもあります。さらに、骨や関節を壊してしまうこともあります。

また、傷んだ皮膚から細菌感染が起き、皮膚の下に膿がたまります。
これが破裂して膿が大量に出てきてから気づくことも珍しくありません。さらに、床ずれにウジがわいてしまうこともあるため、床ずれが起きてしまった場合は、必ず獣医師の診察を受けましょう。

特に傷口の細菌感染やウジは、体力が落ちた老犬には命に関わることになるため、床ずれは予防が大切です。(※2)

犬の床ずれ予防は清潔を保つことと、寝たきりをうまく介助すること

犬の床ずれ予防は清潔を保つことが大切です。
これが出来ていなければ、いくら手厚い介助をしても、良いベッドを使っても、うまく予防できません。

そのことを頭に入れておきながら、まずは寝たきりの介助について考えていきましょう。

寝たきりの介助

犬は寝たきりになっても、回復することがあります。
そのためにも、諦めずに介助してあげてください。

特に、関節が固まらないように、無理しない程度に身体を動かしてあげることが大切です。身体をなでる、さする程度のマッサージも血行が良くなりおすすめです。

飼い主様がしっかり見て触ることで、床ずれなどの問題を発見できることもあるので、できる限り構ってあげてください。

寝たきりでも立とうとするなら、補助しながら立てるように訓練をしてあげましょう。
立てれば意外と歩けることもありますので、カートやハーネスを使い、散歩は続けることがおすすめです。

歩けない、寝たきりを理由に散歩をやめてしまうと脚力低下が進みます。そのうえ、気分転換が出来ないなど、犬のストレスの原因となります。

ただし、足を引きずってでも歩きたがる場合は、犬用の靴などを使用し、怪我の防止をしてください。

また、カートの中には衝撃吸収マットやクールマットなど、お散歩道の状況により合ったものを入れてあげると良いでしょう。もちろん、これらのマットも丸洗いできるものがあるので、それを選ぶことをおすすめします。(※3)

ケア用品やグッズの選び方~クッションから着るタイプまで~

犬の床ずれ予防は清潔を保つことが重要です。
そのため、床ずれ予防グッズを使う際は、清潔を保てるグッズを選びましょう。

なぜなら、老犬はちょっとした細菌感染でも命に関わることがあるからです。
もちろん、不衛生は人間にもよくありません。これを念頭に、まずはベッドから解説していきましょう。

寝たきりの犬が多く過ごす場所はベッドです。まずは快適な寝床を作ってあげてください。

ペットベッドの下には、座布団のような厚みがあって足をとられないものを必ず敷き、寝床に厚みをもたせましょう。

ボアが付いていたとしても、寝たきりの犬は自分の体重で皮膚に負担をかけてしまいます。できるだけ床と離して厚みをつけることで、負担軽減と床ずれ予防につながります。

そして、骨が出ている箇所や関節周りにはクッションを使って個々に保護してあげましょう。這って動いてしまう子には、サポータータイプやウエアタイプを使うと便利です。

もちろん、体圧分散ができる低反発素材のベッドもおすすめです。最近では丸洗いできて通気性にこだわったものもあるので、そうしたものはよりおすすめします。

寝床や食事中の濡れ汚れには、トイレシートよりも赤ちゃん用の防水シーツがおすすめです。
犬用のトイレシートは少し高価で、引きずっただけで吸水ポリマーが出てくることがあり、介護には意外と不向きです。

赤ちゃん用防水シーツならさまざまなサイズが出ているうえ、家庭で洗濯できるので、常に衛生状態を保つことができます。(※4)

お尻の毛を刈り、尻尾を養生する

老犬の清潔を維持するにはお尻の毛を刈り、尻尾の毛を包帯でガードしておきましょう。

尻尾の養生にはペット用の伸縮包帯が便利です。包帯同士でくっつくので巻き直しもできれば、結ぶ必要もありません。汚れたら取り換えるだけなので手間もかかりません。
しかし、伸縮包帯を使う上で注意しなければいけないのは、きつめに巻きすぎないことです。伸縮包帯の特性上、締め付けが強くなる傾向があります。その結果、血行不良や組織の壊死を誘発することがあります。

タオルウォッシュや部分浴

蒸しタオルを使って愛犬を清潔にしましょう。

寝たきりの老犬だったとしても、寝ているだけで皮脂汚れは出てきますので、タオルウォッシュで清潔を保ちましょう。気分転換にもなります。

ただし、老犬の肌はデリケートです。優しく拭いてあげましょう。終わったら濡れたままにせず、仕上げとして乾いたタオルを押し当てるようにし、水気を取りましょう。

また、タオルは熱すぎないようにしてください。

固まった排泄物や広範囲の汚れには、洗い・乾かしの時間が短縮できる部分浴がおすすめです。

用意するものは、犬を寝かせられる大きさのすのこと、10~15cm程度の高さがある発泡スチロールやブロックです。

このブロックで、すのこに傾斜をつけ犬を寝かせて部分洗いをします。

小型犬ならベッドの上に赤ちゃん用の防水シーツなどを敷き、たらいのお湯をかけながら洗うことも可能です。(※5)

水不要シャンプー

水不要シャンプーやウェットティッシュ、タオル、ペット用除菌消臭剤は犬の介護には必要です。

水不要シャンプーを使うときは、低刺激のものを選びましょう。ゴシゴシすると肌に負担がかかるので、優しく洗ってください。すすぎは不要なので、乾いたタオルで泡と汚れを拭きとれば終わりです。

ペット用ウェットティッシュにも、無臭で除菌できるものもありますので、ぜひ利用してみてください。(※5)

監修者コメント
増田 国充
ますだ動物クリニック院長/ 獣医師

犬の高寿命化に伴い高齢化も顕著になってきました。それに合わせてペット専用の介護用品が充実してきました。主に下半身を保持するためのハーネスや歩行補助用具、床ずれ防止のマットなど、動物の使用に特化したものが開発されています。
これらによる飼い主さんへの恩恵は計り知れないものがあります。
一方で、これら介助用品も用途や使い方が誤っていれば、介助する側とされる側にとって逆に負担を生じることもあります。個々によって抱えている問題点は微妙に異なっていることがあり一括りにできない部分があります。適切な介助用品を選ぶにあたって、専門家の意見を参考にしながら活用していただくことが重要であると考えます。
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寝たきりの犬に寝返りをさせるには

床ずれ予防のため、犬に寝返りをさせる頻度は2時間に1回程度が目安とされていますが、高機能な介護マットなら頻度は少なくて済みます。体重が重く寝返りが大変なときや、夜中に起きられないときは、そうしたものを使うのも良いでしょう。

寝返りをさせるとき、寝かせたまま背中を軸に回転させる方法は絶対にしないでください。
内臓に負担がかかるばかりか、食道に食べ物がとどまっていると気管に入ってしまうことがあります。

必ず犬の身体を起こしてから、以下のように寝返りをさせましょう。

  1. 犬の顔が向いている方から方手を肩下に入れる
  2. もう一方の手で腰を支えて抱きかかえ、上体を起こす
  3. 犬のお尻を飼い主様の膝に一旦乗せ、腰を支えていた方の手で両後ろ足を持つ
  4. 身体が反対を向くように犬の上体をずらしながら、お尻を寝床に置く
  5. ゆっくりと完全に反対を向かせながら寝かせる

(※5)

大型犬は床ずれが起きやすい

床ずれは、同じ部分に体重がかかることで血行不良になり、組織が壊死します。

そのため、もともと体重が重い大型犬は床ずれになりやすいとされています。
しかし、何度も大きな犬の寝返り介助をするのは大きな負担です。

負担軽減のために、あらかじめ犬の身体の下にバスタオルを敷いておきましょう。一方の端を持ち上げると、犬の身体を立ち上がらせることができるので、ぜひやってみてください。

それが難しいときは、以下の方法を試してみましょう。

  1. 不揃いで良いので前足を前方に向け、胸を床につける(伏せの姿勢ほど後ろ足がきれいに揃わなくても大丈夫です。前足をしっかり前方に向けることが大事です。)
  2. 両後ろ足を揃え、片方の手で膝とかかとを曲げた状態で掴む
  3. もう片方の手で反対側の股関節辺りを支えつつ、②で曲げた足をお腹の下にしまう
  4. 手を腰に添えながら体を持ち上げ過ぎないように、テコの原理で反対側にそっと倒す(前足をしっかり前に向けておくことで、お尻を倒すと上半身もついてきます)

(※6)

中・大型犬の姿勢維持にはグッズを使う

中・大型犬の飲水や食事の補助のとき、クッションなどのグッズを使えば楽に姿勢維持が可能です。中でも、厚みを変えられる商品がおすすめです。

寝るときに使用すれば楽な寝姿勢の維持ができるうえ、クッションで定期的に身体を持ち上げることが血行を良くし、寝たきりや床ずれの予防になります。

ドーナツ型の商品を使うなら、床ずれになりやすい関節や床ずれになった患部を穴部分に入れて使用しますが、穴周辺に体重が集中します。まめに位置を調整してあげましょう。(※7)

飼い主が出来る床ずれの手当について

床ずれになってしまったら、細菌感染の有無の確認や、壊死した部分を取り除くためにも、すぐに獣医師の診察と治療を受けましょう。

病院で行うこともありますが、患部周囲の毛は不潔の原因となるため、バリカンで刈ってしまいます。これは自宅でできる処置なので、こまめに確認して短い毛を維持しましょう。

患部を乾燥させないための方法について獣医師から説明があったなら、それも行いましょう。基本的には獣医師の指示に従ってください。

また、おむつを使用しているなら、排泄物で患部が汚れないようにこまめに交換することと、水不要シャンプーや除菌ができるペット用ウェットティッシュなどを使って清潔に保ってあげましょう。(※2)

犬の介護のときは飼い主様の心と身体のケアも忘れずに

犬の介護はとても大変です。
そして、犬の幸せは飼い主様の幸せです。

介護に一生懸命になるあまり、自分のことを後回しにしてしまいがちの方もいらっしゃいます。しかし、飼い主様の心と身体の健康あっての犬の介護です。

飼い主様に何かあったら、犬も生きていけません。

家族と連携しつつ、ペットシッターや老犬ホーム、動物病院、動物介護士をうまく使って息抜きをしてください。

中・大型犬の介護のときは、腰痛予防ができるコルセットなどを用意するのもおすすめです。

犬と人間、双方の幸せこそがペットを飼う最初の目的だったことを、今後も忘れないでください。

監修者コメント
増田 国充
ますだ動物クリニック院長/ 獣医師

犬の食餌や医療の向上により、寿命も20年前と比べると非常に長くなりました。人間でも今フレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)への対策がより重要であるという認識が高まっています。
この予防のために、心身の養生、散歩や適度な運動をすることで筋力低下といった身体的な衰えに加えて精神的な不安定さの抑制につながると考えられています。一方で、床ずれになる要因として規律や歩行の維持が困難になり、同じ姿勢を長時間維持していることが挙げられます。犬自身も思うように動けないことで痛みをはじめとした身体的な苦痛を生じるだけでなく、精神的な不自由さを持ち合わせます。
それを介助する飼い主さんには大きな負担がかかることがありますが、ご自身で負担を抱え込まないよう信頼のおける家族や動物病院あるいはペット介護の専門家に相談してみてください。
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まとめ

  • 犬の床ずれの原因は同じ姿勢でいることと、血行不良
  • 床ずれの初期は、皮膚が赤くなったり、痛みやかゆみが出る。そして皮膚に穴があき、骨や関節が露出することもある
  • 床ずれは傷口に膿が出て細菌感染したり、ウジがわいたりする。犬の床ずれになりやすい箇所は、骨が出ていて脂肪が少ない膝関節・前足の肘・肩・腰骨・頬・足首
  • 寝たきりの犬には、関節が固まらないように、無理しない程度に身体を動かしてあげることと、身体をなでる、さする程度のマッサージをまめに行うこと
  • 寝たきりでも散歩は続ける
  • ベッドの下には座布団などを敷き、厚みを持たせる
  • お尻の毛を刈り、尻尾を養生し、タオルウォッシュや部分浴、低刺激の水不要シャンプーで清潔を維持する
  • 2時間に1回程度犬に寝返りをさせるが、背中を軸に回転させることは危険
  • 飼い主様の心と身体の健康のために、家族と連携しつつ、ペットシッターや老犬ホーム、動物病院、動物介護士をうまく使うこと
参考文献

※1:床ずれ - 17. 皮膚の病気 - MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/17-%E7%9A%AE%E8%86%9A%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E5%BA%8A%E3%81%9A%E3%82%8C/%E5%BA%8A%E3%81%9A%E3%82%8C
※2
シニア犬・老犬の床ずれ
https://cutia.jp/rouken-tokozure.html
寝たきりペットの床ずれ予防|老犬介護|北海道恵庭市 | よつば動物病院
https://www.yotsuba-ah.com/?p=832
※3:寝たきり・床ずれへの対応ノウハウ【老犬ケア】
https://www.rouken-care.jp/knowhow/decubitus/
※4:特集:シニア犬・高齢犬のベッド選びと入れ替え時期
https://anberso.blog/?p=6475
※5:シニア犬(老犬)の生活 ~寝たきりになったパートナーのために。 清潔を保つ工夫と、床ずれ予防~
https://www.green-dog.com/media/senior/life/index08.html
※6:床ずれ予防と老犬ケア
https://jp.unicharmpet.com/ja/web-magazine/dog-000014.html
※7:zuttone ずっとね 姿勢を保持するやさしいビーズクッション 大|Petio ペティオオンラインショップ
https://www.petio.com/fs/pshop/zuttone/4903588257797

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この記事の執筆者
執筆者

竹田 恵氏

ペットシッター士
ライター

竹田 恵氏

ペットシッター士
ライター

2017年よりライターとして活動中。子供の頃から動物好きで、猫、ハムスター、うさぎの飼育経験あり。現在はシーズー犬と一緒に暮らしている。犬は他の動物と比べて人間と密な生活になるため、ペット関係の資格を取得した。

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