2022.01.07
2023.09.11
老猫が食べないのは病気?食欲不振の原因と対処法、通院のタイミング
老猫がご飯を食べないのはとても心配です。持病のない老猫なら、24時間以下であればご飯を口にしなくても心配はありません。ただし、24時間以上食べない、明らかに食が細くなったなどの食欲不振は獣医師へ相談しましょう。老猫の食欲不振の原因や対処法、食事改善について解説します。
この記事の監修者
増田 国充氏
ますだ動物クリニック院長 / 獣医師
増田 国充氏
ますだ動物クリニック院長 / 獣医師
獣医師、防災士、2001年北里大学卒
2007年ますだ動物クリニック開院。診療に東洋医療科を加え、鍼灸や漢方による専門外来を実施。運動器疾患に対して鍼灸による治療を積極的に取り入れ、県内外から症例に対応する。また、鍼灸・漢方等で国内外で講演を実施。動物看護系専門学校非常勤講師兼任。
老猫がご飯を食べない!高齢猫の食欲不振について
老猫は食欲が落ちることがあります。
この原因はさまざまですが、運動量が低下する、消化機能の衰え、噛む力の衰えなどが一般的な原因です。
そして、筆者も猫や犬を飼って経験したのが、年齢を重ねて味の好みが変わることです。獣医師に食欲不振の原因を尋ねたとき、まず言われたのがこの原因でした。
飼い猫が歳をとったら、まずはこうした「老いによる食べない理由」を省きながら、上手に老猫の食欲不振につき合っていかなければなりません。
しかし、老猫の食欲不振は命に関わることがあります。老猫の食欲不振はどのくらい放置しても良いものなのでしょうか。
食べないまま何時間・何日経ったら病院へ行けば良いの?
老猫が食べないまま24時間以上経過したら、動物病院に行きましょう。
以下のような状態があれば、獣医師に告げてください。これらの症状があるなら、重大な病気がある可能性が高いためです。
- 嘔吐……吐くタイミングや内容、状況、頻度により考えられる病気が変わる
- 下痢……腸の病気、感染症、異物を飲んだなどの可能性
- 水を飲まない……脱水症状の可能性
- 口臭やよだれ、食べるときに痛がる……歯周病や口内炎などの可能性
これらの症状がなくても、老猫が24時間以上食べないようなら必ず通院してください。
なぜなら、脂肪肝(肝リピドーシス)という肝臓に脂肪がたまる病気になるリスクが高まるからです。
脂肪肝(肝リピドーシス)は急激に症状が進むため、早めに対処する必要があります。(※1)
食べない原因は老化?それとも病気?
老猫が食べない原因のうち、主なものは以下の4つです。
- 歯や口の病気
- 鼻づまり・鼻水
- 基礎代謝の低下
- 偏食やストレス
それぞれについて詳しく解説しましょう。
どのような症状でも必ず受診することを念頭に、読み進めてください。(※2)
歯や口の病気
歯や口の病気があると、痛みが原因となり食事がしにくくなります。
特に歯周病は年齢を重ねることでなりやすくなる病気です。
歯周病によって歯や歯茎に痛みがあると食べたくても食べられなくなります。
猫の歯周病は、専門的な医療による適切な治療が必要です。
そうならないように、日常的に歯磨きの習慣をつけましょう。
他にも口内炎や口内の怪我という可能性もあります。
老猫は唾液が減るため口内殺菌力が衰え、口内炎になる可能性があります。さらには、感染症など大きな病気が潜んでいる可能性も否めません。
口内炎はひどくなると柔らかいフードでも痛くて食べられなくなるため、たかが口内炎と思わず、食欲不振のときは一度口の中を確認しましょう。
鼻づまり・鼻水
生き物が歳をとると、さまざまな感覚が鈍ります。
猫は嗅覚に優れ、出されたフードが安全か否かを匂いで嗅ぎ分けます。歳をとって嗅覚が鈍ると、フードが安全かどうかわからなくなり、食欲が落ちます。
ただし、嗅覚が落ちた原因が感染症や呼吸器疾患の場合もありますので、勝手に断定せず、獣医師に相談しましょう。
また、若い頃からしっかりワクチンを接種し、感染症の予防をすることも大切です。
基礎代謝の低下
老猫は動く範囲が減り寝ている時間が増えます。
そのため、運動量が減り以前よりエネルギーを必要としません。
これは自然なことなので、必要以上に心配することはありません。しかし、全く手を付けないなどの食欲不振が続くようなら必ず獣医師に相談してください。
偏食やストレス
猫は偏食です。味や香り、食感等それぞれ好みが違います。
そのうえ、猫は好きなもの、決まったものしか食べない傾向が強い動物です。
加えて、食事に薬(異物)が混ざっていたなど嫌なことがあると、そのときと同じフードを食べなくなることもあるほど、食事にうるさい猫もいます。
猫の好みの変化を感じ取り、フードにもレパートリーを作りましょう。
そして、猫はストレスを感じると食事を摂らなくなることがあります。
引っ越しなどの環境の変化、構ってもらえない、知らない人が家に来た、動物病院に行かされた、騒がしいなどのストレスがあるときは、様子を見ることも大事です。
ただし、食器に関するストレスがあるなら、すぐに改善してあげましょう。
猫はヒゲが食器に当たる、首輪につけた鈴などが食器に当たる、食器が深すぎる・浅すぎるなどの好みや、清潔さにも敏感に感じとります。
食器を変えたときは、猫の様子をよく見るようにしましょう。(※3)
食事環境の改善について
老猫の食欲が落ちたら、食事環境全体の見直しをしましょう。
今までのフードに食欲を示さなくなったら、他のフードを検討してみましょう。
嗜好性の高いフードやウェットフードを検討して、与え方の工夫なども考える必要があります。
しかし、猫は変化を嫌うのでフードの切り替えは根気が必要です。
猫がシニア期になると発症しやすい病気の代表ともいえるものが、慢性腎臓病です。
もともと猫は人間や犬に比べてネフロンと呼ばれる尿を作り出す装置が少ないことや、飲水量が少ないことなどといった身体的特徴が影響しているからと考えられています。慢性腎臓病では、食欲が低下し体重減少がみられます。その一方で初期の腎臓病の場合は、水を飲みおしっこの量が増える変化がみられます。確かに、高齢になると活動量が減ることから食餌量が減る傾向にありますが、単に「歳のせい」なのかその裏に隠れた疾患が存在するのかをきちんと見極めることが重要です。
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食事環境の改善
食事環境のストレスを取り除くだけで食欲が戻ることもあります。
猫が静かにゆっくり食べられる環境はとても大切です。
多頭飼いなら、老猫だけ違う場所で食べさせるのも良いでしょう。
同じように、人間と同じ部屋で食事をする際にも、大きな音のするものを猫の食事中に使用するのは避ける必要があります。
猫は音にとても敏感なので、静かな環境を提供してあげましょう。
また、食器の位置が低すぎて食べにくいことも考えられるので、食器用の台を用意するなど、首を下げずに食べられる高さに調整してあげることも必要です。
与え方の工夫
猫の食欲は、フードの与え方を工夫するだけで良くなることもあります。
いつものフードを猫用のスープで柔らかくして食べやすくする、個包装のものにして毎回新鮮な状態のフードをあげるのも良いでしょう。
他にも、少量ずつスプーンや手で与えてみる。
人肌程度に温めて香りを立たせると興味を示すこともあります。
猫は個性豊かな動物なので、その子に合った与え方を探してみてください。
シニア用フードへの切り替え
シニア用のフードは、高齢猫のための健康をサポートします。
様々な種類のシニア用フードが販売されてのでどれを選んでいいか迷った時は、現在与えているフードのシニア用を試してみましょう。
もし、下痢などの不調が見られるなら一旦戻し、改めて別のシニア用フードを試してみましょう。
ただし、どのフードに変えるとしても猫は変化を嫌います。
今までのフードに少しずつ混ぜるなどし、決して一気に変えることをしないでください。
猫のフードの変え方(※4)
- 1~2日目:以前のフード75%+新しいフード25%
- 3~4日目:以前のフード50%+新しいフード50%
- 5~6日目:以前のフード25%+新しいフード75%
- 7日目~:新しいフード100%
万が一新しいフードが合わず想定より食いつきが悪い場合に、その後に生じうる体への影響を最小限にすることができるからです。
ウェットフードの使用
ウェットフードはドライフードよりも風味が豊かです。
さらには、缶タイプであれば缶を開ける音に反応することで猫の興味を得られるうえ、水分が多くとれるメリットもあります。
しかし、ウェットフードは価格が高いというデメリットがあるため続けることが難しいこともあります。そのようなときは、ドライフードにウェットフードを少し混ぜるなどしても良いでしょう。
手作り食について
シニア用のフードや嗜好性高いフードでも食べないときは、手作り食を考えてみましょう。
ただし、手作り食は手間がかかるだけではなく、飼い猫それぞれに合った食事を見つけるまで相応の時間がかかります。
メリット
- 添加物のない食事を提供できる
- 飼い猫に合った食事を提供できる
- 身体に合わない食べ物があった場合、取り除くことが容易
- 温度や香りが良い状態の出来立てを提供できる
- サプリメントや薬を混ぜやすい
デメリット
- 重要な栄養素はサプリメントなどで補充する必要がある
- 飼い猫の身体に合う食事がわかるまで時間がかかる
- 買い物や料理をする手間がかかる
- 良い物をあげようとするときりがない
- カロリー計算が難しい
- 分食しにくい
- 飼い猫のおなかが空いたタイミングですぐには出せない
手作り食を取り入れるなら、これらのメリット・デメリットを良く考えてから対応する必要があります。
また、全てを手作りにする必要はなく、フードの上に蒸した鶏肉を置く、フードに手作りのスープをかけてあげるなど、一部分だけ取り入れるのもおすすめです。(※5)
手作り食の給餌を行ってよいかどうかは、個々の持病の有無や体質に左右されることがありますので、かかりつけの獣医師に相談しておくとよいでしょう。
強制給餌の方法
食事の工夫をしても老猫の食欲が戻らないときは、強制給餌を行う必要がでてきます。
強制給餌は2種類の方法があるので、やりやすい方を選んでください。
- 流動食を与えるならシリンジで流し込む
- ペースト状のフードは上あごや奥歯に塗り付ける
どの方法でも清潔さが大切です。
食事が終わったら老猫の口周りの汚れをきれいにふき取ってあげてください。
こちらの記事もご覧ください
老猫が健康に過ごせるための栄養素とその理由
老猫が長生きするには、栄養の吸収が不可欠です。
特に必要な栄養素に絞って、解説します。
水分
脱水症状や泌尿器疾患を防ぐために不可欠なのが水分です。
高齢になると以前より水を飲まなくなるため、ウェットフードを与える、ふやかしたドライフードを与えるなどで水分を取りやすくする必要があります。
目盛り付きの食器を使い、いつもどれくらい飲んでいるかを知っておくことも重要です。(※6)
たんぱく質
基本の栄養素のひとつです。
猫は人間と比べて約5~6倍のたんぱく質を必要とします、猫用フードにはタンパク質が多く含まれています。(※6)
脂質
脂質は太るというイメージがありますが、エネルギーになる大切な栄養素です。
特に食欲が落ちた老猫にとっては嗜好性を上げてくれる栄養素なので、摂らせすぎない程度に入れたい栄養素です。(※6)
ビタミン
市販のフードにはたくさんのビタミンが含まれていますが、できるだけ自然な形で摂ってほしいのがビタミンDです。
特に食欲が落ちた老猫がビタミンDを摂取するなら日光浴が一番です。
日当たりの良い場所にベッドを置いてあげましょう。
ただし、夏場は適度に場所を移動させ、くれぐれも熱中症に注意してください。(※6)
カルシウム
老猫は骨がもろくなっているので、骨粗鬆症予防にカルシウムも必須です。
ただし、与えすぎると腎臓に負担がかかるため、適量を心掛けましょう。(※6)
食物繊維
食物繊維は腸内環境を整えると言われています。
整腸作用があり、胃に溜まった毛玉のケア、便秘の改善の効果が期待できます。(※7)
猫は犬に比べて嗜好性にこだわる動物種であるといわれます。気に入らないと食べない…というようなお話もよく耳にします。
「食欲がない」という場合は、大好きなフードの入ったお皿を近づけても顔を背ける様子が見られます。本文で紹介されていた口内炎をはじめとしたお口のトラブルの場合、食べたい気持ちはあるにもかかわらず、口の痛みのために満足に摂食できない、という場合もあります。この場合、食欲自体は存在することがありますのでよだれの量が増えることがあります。このように猫が食べ物を食べない場合、すべての場合において「食欲が消失している」ということではありません。原因の究明のためには、行動の観察と早めの受診がポイントです。
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まとめ
- 老猫が食べないまま24時間以上経過したら、必ず動物病院を受診する
- 老猫の食欲不振の原因は、歯や口、鼻の病気・基礎代謝の低下・偏食・ストレス・好みの変化などがあげられる
- 今までのフードを食べなくなったら、他のシニア用のフード、手作り食などに変えてみる
- いつものフードを猫用のスープで柔らかくする、個包装のものにして毎回新鮮なフードをあげる、スプーンや手で与えてみる、人肌に暖めるのも効果的
- 静かな環境で食べさせる、食べやすいよう食器台を用意するなどの食事環境の改善も大切
- 水分・たんぱく質・脂質・ビタミン・カルシウム・食物繊維は特に老猫に必要な栄養素
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骨壺に納めご返骨
霊園への埋葬
※1
老猫が何日も餌を食べない!高齢猫の食欲不振を改善する方法は?
https://motto-cat.com/archives/32
猫がご飯を食べない理由とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説
https://pshoken.co.jp/note_cat/cat_symptom/case020.html
※2
老猫が食べないときはどうすればいい?原因や対処方法について
https://www.koneko-navi.jp/column/how-to-care/old-cat-food/
【獣医師監修】老猫がごはんを食べない!流動食の与え方や強制給餌の方法
http://psnews.jp/cat/p/34662/
※3:猫がご飯を食べないのは、飽きたから?それとも病気?~食欲不振の理由と対処法~
https://www.i-sedai.com/pet/column/cat/C0113.html
※4:キャット フードを変えるためのガイド
https://www.royalcanin.com/jp/cats/health-and-wellbeing/a-guide-to-changing-your-cats-food
※5
手作り猫ごはんの基本
https://nekonekobu.jp/handmade_base/
猫に手作りごはんをあげてもいい?あげるときの注意点は?
https://www.anicom-sompo.co.jp/nekonoshiori/6582.html
※6:猫ちゃんの食事基礎知識
https://www.komeri.com/contents/smt/howto/pet/04770.html
※7:食物繊維
https://www.royalcanin.co.jp/dictionary/nutrients/%E9%A3%9F%E7%89%A9%E7%B9%8A%E7%B6%AD
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この記事の執筆者
竹田 恵氏
ペットシッター士
ライター
竹田 恵氏
ペットシッター士
ライター
2017年よりライターとして活動中。子供の頃から動物好きで、猫、ハムスター、うさぎの飼育経験あり。現在はシーズー犬と一緒に暮らしている。犬は他の動物と比べて人間と密な生活になるため、ペット関係の資格を取得した。
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